度々オーダースーツの話で申し訳ないが、今、格安オーダースーツが人気らしい。
テレビのドキュメンタリー番組でも取り上げられるくらいなのだから、この人気は本物なのだろう。
人気があるということは儲かっていることでもある。
ビジネススタイルのカジュアル化を受けて、紳士服業界全体が冷え込む中、格安オーダースーツだけが元気なようだ。
だから大手も含めたアパレル企業がオーダースーツに参入している。どこもかしこも格安オーダースーツである。
洋服の中で紳士服を作るのが一番技術と手間がかかる。にもかかわらず、格安オーダースーツは1週間〜2週間くらいで出来上がることが一つの売りだ。
かなり昔の話で恐縮だが、30年くらい前は、カットソーを染めから仕上がりまでやって1週間はかかった。それに比べてスーツが
1週間というのは驚き以外の何物でもない。
業界は自社工場を造ったり、アジアに進出したりと目まぐるしい展開をしている。
正直に言う。私は格安オーダースーツを作ったことがない。作らない理由は簡単で、欲しくないからだ。
オーダーでスーツが1着29,800円、19,800円。とても考えられない価格である。どうしても安かろう悪かろうと思ってしまうのだ。ファストファッションならぬファストスーツ。
安いことを考えると、スーツにかかる工程を簡略化する以外ないと思う。機械でやれる部分はやる。人の手は極力かけない。
人の温もりの感じられる服がいいと思っている私は少数派だろう。
服に対して憧れを持つ私だからこんな考えになってしまうのだろうか?
いつも引き合いに出しているが、おしゃれな人は格安オーダースーツを絶対に作らない。